今回はこんな疑問を持つ方へ向けての記事です。
筆者のプロフィール
・元消防士で現在はフリーランス
・Fラン大から倍率20倍消防局に合格
・警察、消防と体力試験経験済み
公安系の体力試験は3回経験してきましたので、ある程度参考になる情報が発信できるはずです。
本記事を読むと以下が分かります
・体力試験の種目と内容
・体力試験の評価基準
・体力試験合格の秘訣
まず最初に結論です!
①:体力は人並みで問題なし!
②:苦しくても粘る姿勢が見られている
③:できなさすぎると足切り食らいます
それでは詳しく解説していきます!
【消防士の体力試験】どんな種目がある?
各自治体のホームページを参考に体力試験の科目を調べてみました。
・腕立て伏せ
・懸垂
・腹筋
・握力
・反復横跳び
・ダッシュ
・かがみ跳躍(スクワットジャンプ)
・20mシャトルラン
・立ち幅跳び
・長距離走
中には「275m走」や「60m往復ダッシュ」など特殊な種目を実施している消防本部もありますが、大体は上の3~4種目にの内に収まります。
【消防士の体力試験】どんな内容?
腕立て伏せ
腕立て伏せの主な3パターン
①制限時間内に何回できるか(回数方式)
②一定数が残るまで実施(脱落方式)
③試験官の点呼に合わせて全員で実施
「腕立て伏せ」の種目でよくあるパターンは上記の3つです。
ちなみに筆者が所属していた消防本部では「90秒で何回腕立て伏せができるか」といった回数方式が採用されており、伏せた時に胸と地面が15cm以内でないとノーカウントというルールでした。
回数方式では消防本部によって制限時間に差があり、1分制を設けている場所や2分制を採用している本部もあり様々です。
他には試験官の「1、2、3…」という合図に合わせて、受験者全員で腕立て伏せを実施する「カウント方式」を実施している消防本部もあり、終わりの見えない絶望感に襲われますが、決して諦めず粘る姿勢を貫きましょう。
「腕立て伏せ」のよくあるルール
・顎が付くまで下げる
・視線は前(顔を上げて実施)
筆者が所属していた本部では、胸を下げたときに地面と15cm以内でないとノーカウントという規定の元実施されましたが、おそらく腕立て伏せを採用しているほとんどの消防本部はこれに準じたルールを設けています。
主な一例として「腕が90度になるまで曲げる」や「下げたときに顎を地面につける」といったルールがありますね。
懸垂
懸垂の主な2パターン
①試験官の呼称に合わせて実施
②制限時間内に何回できるか
大体の消防本部では①のパターンが採用されており、試験官の「1、2、3…」という呼称に合わせて受験者全員で懸垂を行う方法です。
またすべての本部ではありませんが、懸垂のルールとしては以下のようなものがあります。
・3秒ごとに懸垂
・顎が出るまで体を挙げる
・反動を使ってはいけない
・下げた時に腕はしっかり伸ばす
イメージは「自衛隊式懸垂」に近く、決められた制限時間をやり切ればその時点で終了というものや、制限時間関係なく無制限に限界まで実施させるところもあります。
ちなみに筆者の所属していた消防本部では②が採用されており「2分間で何回できるか」といったものでした。
実際にやってみると分かりますが、2分間懸垂を行うのはめちゃくちゃ困難で棒に掴まっているのがやっとです。
今でこそ分かりますが、そもそも常人が2分間懸垂をするのは不可能です。
なので試験官は無茶なことをさせる前提で受験者を見ており、そこでは「落ちてしまったらそのまま辞めてしまう人」や「すぐに諦める人」を脱落させるためにふるいにかけていたわけです。
要するに始めから回数は関係なく、落ちてしまってもまた食らいついていく受験者や「この人にだったら消防士を任せられる」と思える人材をピックアップするための試験だったというわけですね。
なので懸垂に限ったことではないですが、体力試験に臨む際は全ての種目で限界まで出し切るということをまず意識しましょう。
腹筋
・「制限時間内に何回できるか」が主流
ホームページには「起き上がり」や「上体起こし」と表記されることもあり、大体は30秒~2分間の短期決戦型の種目です。
よくあるルールとしては以下のような感じです。
・腕は胸の前でクロス
・しっかり背中を床につける
・足は90度で固定してもらう
握力
・左右2回ずつ実施して平均値が記録に
基本的には左右で2回ずつ計測し、良い方の記録を採用するというやり方になると思います。
反復横跳び
・「制限時間内に何回できるか」
学校のスポーツテストなどで経験した方が多いと思われますが、基本的に制限時間は20秒、その間にどれだけ反復できるかを計測します。
2回実施する消防本部もあり、その場合は良い方の記録が反映という形になりますが、全く運動していない方がなめてかかると酸欠必須ですので、体力づくりはもちろんのことなるべく実践に近い形で事前にリハーサルしておくことをオススメします。
ダッシュ
想定されるパターン
①60mダッシュ
②折り返しダッシュ
③ホース搬送ダッシュ
④275m往復ダッシュ などなど…
ホームページには疾走やかけ足と表記されることがあり、この種目は消防本部によって内容が実に様々です。
筆者の元所属本部では60m走が採用されており、その他にも80m走や120m走、275m走など中途半端でよく分からない距離を採用している本部もあります。
考えられるバリエーション
・折り返しの往復ダッシュ
・制限時間内にどれだけ走れるか
かがみ跳躍(スクワットジャンプ)
想定される2パターン
・制限時間内にできるだけ
・試験官の呼称に合わせて全員で
跳躍やスクワットと表記されることもあり、メジャーなやり方としては直径1mほどの円の中に入って何回スクワットジャンプができるかという実施法です。
試験官の合図に合わせて受験者全員で実施するカウント方式や、1分間で何回できるかなど、様々な測定法が採用されています。
主なルール
・1分間に何回できるか
・試験官の笛の合図に合わせて跳躍
ちなみにこの種目はめちゃくちゃしんどいので、普段からスクワットジャンプをやり込んでおかないと終わった後に立ち上がれなくなります笑
20mシャトルラン
・音に合わせて20mを往復
学校のスポーツテストなどでおなじみのシャトルランです。
ちなみにスポーツテストにおいては、18歳でA判定の回数は102回以上となっているので、これを目標に体力づくりをすると良いでしょう。
立ち幅跳び
・採用本部は少ない
・2回実施の場合もあり
こちらもスポーツテスト等で経験した方が多いのではないかと思います。
消防本部によっては2回計測して良い方の記録が反映される場所もあり、練習したからと言ってすぐに記録が伸びる種目ではないので、長い期間をかけて体力づくりをしておく必要があります。
長距離走
長距離走の主なパターン3つ
①制限時間内にどれだけ走れるか
②1500m走
③5km走
長距離走は消防本部によって実施ルールが様々ですが、その多くは5分間走や1500m走、5km走などが主流で、20mシャトルランを採用していない本部は、代わりとして長距離走を設けている本部が多い印象です。
基本的にはタイムが直接成績として反映されるので、日ごろから長い距離を走りこんでおく必要がありますね。
【消防士の体力試験】評価基準は主に3つ!
・得点形式
・平均の基準
・受験態度
消防士の体力試験の順位の付け方(評価される基準)は各消防本部によって違いがあり、主に上記の内のどれか、または2つ以上の要素を組み合わせている場合がほとんどです。
得点方式
スポーツに自信がある人は有利!
評価基準1つ目は種目の成績が良ければよいほど得点に直結する「得点方式」です。
まさしくスポーツテストのようなイメージで、種目によって回数やタイムに得点が設定されていて、その総合得点で成績と順列が決まるといったイメージです。
足切りラインの設定
足切りラインだけ設定している
体力試験の評価基準の2つ目は「足切りラインの設定」です。
これは回数やタイムに得点は設定されておらず、足切りラインだけが設定されており、一定の回数やタイムに達しなかった受験者は即アウトにするといった方法です。
基本的には平均の体力があれば良しとされているケースが多く、求められる足切りラインはそれほど高くないので、きちんと体力づくりに励んできた方なら問題なく突破できます。
具体的には以下のような条件に当てはまらなければ問題ないと思われます。
・懸垂が1回もできない
・長距離走は周回遅れ
・体力がなく試験をこなせない
実際のところ試験の中身はブラックボックス化しているため一概には言えませんが、元消防士の筆者の見解ではこの形式を採用している消防本部が最も多いと思われます。
理由はこの先で解説している「諦めない姿勢」が体力試験合格にとって最も重要な要素になっているからです。
受験態度
【重要】これだけは守りたい3事項
・他の受験者と雑談していないか
・諦めずに限界まで追い込んでるか
・最後に試験官にお礼を言えたか
体力試験の評価基準3つ目は「受験態度」です。
当たり前ですが試験を臨む態度は重要で、仮にも受験者は「ここで働きたいです!」という思いで来ている志願者の立場です。
ですので最低限、上記で挙げた3つの事項は厳守し試験官に「あの受験生はぜひうちに来てもらいたい!」と思ってくれるくらいの礼儀作法を心がけましょう。
意外と多いのが試験中に受験者同士で談笑を始めてしまうケースです。
言うまでもなく試験官から見たらいい気分では無いので、「人生をかけて試験を受けに来ている」ことを常に意識して振る舞うことが大切ですね。
【消防士の体力試験】合格の秘訣3選
合格の三要素
・【最重要】諦めない姿勢
・伸びしろを感じさせる
・準備のよさをアピール
①:【最重要】諦めない姿勢
「諦めない姿勢」さえ貫けばなんとかなる
体力試験合格の秘訣は3つありますが、間違いなく一番重要なのがコレです。
正直なところこれさえできていれば体力は人並みでも十分合格ラインに達することができる可能性は高く、その理由は消防士がどういう仕事なのかを理解することで、お分かりいただけると思います。
消防士の仕事は市民サービス
消防士は火災の鎮火や救急搬送、救助活動など市民のために尽くすことが仕事ですので、一言で言うと、どんな状況下でも「絶対に諦めちゃいけない人達」なんですね。
そんな人達が現場で下のような発言をしていたら失望してしまうと思います。
こんな風に弱音を吐いていたら市民が不安になりますし、まず消防士としてそれはどうなんだっていう話になってしまいます笑
試験官は「この受験生は本当に消防士になれる人材か」という観点で一人一人を精査しており、このボーダーを超えるには1回でも多く、1秒でも速く限界まで体力試験に取り組む姿勢が最も重要になります。
ここまで体力試験を合格するためには体力は平均で問題ないと解説してきたのはこれが最たる理由です。
腕立て伏せが多くできなくても浅くてもいいので、とにかく決められた時間の間、しんどくても体を動かし続けるハートが重要になります。
②:伸びしろを感じさせる
消防士になった後将来性があるか
体力試験合格の秘訣その2は「伸びしろを感じさせる」ことです。
なぜ「伸びしろ」が重要かというと、採用後にだらけて全く仕事をしない「空気消防士」が一定数おり、試験官は空気消防士化しないような組織に貢献してくれる良い人材を引き抜く必要があるからです。
そういった真面目で誠実な人材をピックアップする判断材料が「体力試験に真摯に臨んでいるかどうか」という受験生の態度になります。
消防士は公務員ですがこれが良くも悪くも職員の質を下げる原因になっており、実際に以下のような消防士がゴロゴロいます。
・24時間全く仕事しない人
・待機室でテレビしか見ない人
・事務室PCでAmazonしか見ない人
消防士を目指している方の夢を壊してしまうかもしれませんが、冗談じゃなく上記のような働かない消防士が一定数存在します。
試験官としても働かない消防士を増やしたくはないので、受験者の運動経験や成功体験、どのくらい前から体力試験の準備を始めたか、試験に臨む態度などこれらの要素を総合的に判断し、成長可能性がある人を通過させたいわけです。
③:準備の良さをアピール
体力試験合格の秘訣の3つ目は「準備の良さをアピールする」ことで、ここで言う「準備」とは以下の2つです。
・体力作りをしてきたか
・体調管理は万全か
体力づくりの準備
運動してこなかった受験者は一発でバレる
体力に個人差があるのは仕方ないとして、試験日までにきちんと体力づくりをしてきたかという部分を試験官は見ています。
それは現時点での体力が重要というよりも、長い期間かけて試験のためにしっかりと体力を作ってきたかという過程を重視しているからです。
・体力試験中に倒れてしまう人
・運動不足でケガして途中棄権
上記のような人や明らかに体力づくりをサボっていた受験者は一発で見抜かれてしまい、準備不足とみなされてしまいます。
なので最低でも一通りの種目を全力でやり切れるレベルの体力づくりは必要です。
体調管理
試験官は試験当日までに怪我や病気がなく、体調はしっかり整えてきたか、という部分をかなりきちんと見ています。
例えばですが以下のようなケースに当てはまる場合は準備不足とみなされ、残念ながら一発アウトの可能性が高いです。
・体調を崩して早退
・ケガをしている部分があり参加できない種目がある
厳しい現実ですが、消防士は身体が資本であり体調管理もプロの仕事の一つです。
体力試験の日程は前もって決められているので、当日にコンディションが整っていなければ、準備不足と判断されて失格になってしまいます。
なので試験日直近は規則正しい生活リズムや適度な運動を心がけ、健康的な生活を送るようにしましょう。
【消防士の体力試験】まとめ
・体力試験は本部により様々
・諦めない姿勢が最重要
・体力は平均で問題なし
・準備をしてきたか見られている
いかがだったでしょうか?
消防の体力試験と聞くとリバリのスポーツマンが集まるイメージがあり、運動神経が良くなければ消防士になれないのでは?と考える方も多いと思います。
しかし最近は人柄重視で採用する傾向にあるため受験者の幅が広がっており、運動経験なしの受験者も珍しくありません。
何度も言いますが体力試験で大切なことは「諦めない姿勢」で、現状の体力より消防士になった後、見込みがあるかどうかという視点でじっくり評価されています。
これから体力試験に臨む方は準備を万全に整えて、最後まで全力でやり遂げることが大切になってくるんですね。
今回の記事がこれから消防士を目指す方の参考になれば幸いです。本記事は以上となります!