今回はこんな疑問を持つ方へ向けての記事となります。
筆者のプロフィール
こんにちは、にえふです。私は地方消防局に勤めていた元消防士で、現在はブログの運営を行っているフリーランスです。
今回は元消防士の筆者が、消防士の年収の実態や給料について詳しく解説していきます!
本記事では以下がご覧になれます
※本記事の内容は各消防本部によって差があります。あくまでも一例として参考にしていただければ幸いです。
消防士の年収は高いの?
A.基本的に所得が高い職業ではありません。規模の大きい消防本部はまだマシですが、田舎消防本部は厳しいです。
本部によって差が大きい
消防士の給料は消防本部によって差があります。というのも消防士の所得は市町村の財政に左右されるからです。市役所で働く職員がいますよね?実は消防士もそういった方と同じで、市町村の職員になります。役所で働く職員は○○市(あるいは区、町)の「一般職」という職種の方です。消防士は○○市の「消防職」という職種に該当します。ですので消防士は市町村の職員にすぎず、給与が自治体の景気に左右されるわけです。
消防で収入を増やすには?
消防司令補になる
「消防司令補」は消防の階級の一種です。一般的にこの階級からが管理職になります。消防司令補からは管理職手当が付くので、他の職員よりも収入は上がります。どの程度手当が付くかは一概には言えませんが、私の所属していた消防局では月の給料にプラスで数万円つくほどでした。
救急救命士になる
収入を上げたいなら救急救命士になるのも一つの手です。救急救命士とは、傷病者に対してより専門的な観察や医療処置が行える国家資格を持つ者です。消防の世界では救命士の資格を持つとそれだけでステータスになるので、専任で救急車に乗ったり救急隊で勤務する機会が多くなります。救急隊の出動は消防隊や救助隊よりも圧倒的に多いので、出動一回あたりに付与される手当(出動手当)が多くつきます。
平均年収はどのくらい?
令和2年度の地方公務員給与実態調査結果によると、消防士の平均月給は30万514円となっいます。ここから税金で引かれるのが3万円と仮定すると手取りは約27万円ほとでしょうか。さらに年2回のボーナスを50万円とすると…
あくまでも概算ですが消防士の年収の平均は約420万円くらいになるのかなといったところです。
【重要】実際は平均より確実に低い
そもそも「平均」はデータの真ん中を表すものではありません。例えば収入が300万円のAさんと、700万円のBさんがいるとします。二人の収入から平均を出すと、300+700÷2=500(万円)となります。一方で、収入が100万円のCさんと900万円のDさんで算出しても、平均値は同じく500万円です。果たして平均値で出した値は、丁度真ん中を表している数値と言えるでしょうか?違いますよね。つまり平均値は最も層が厚い値を示すものではないということです。
皆さんが想像しているような、いわゆる「真ん中の値」を表すものは中央値や最頻値という値です。ですのでネット上で溢れている消防士の平均年収額は、消防士が実際にもらっている年収とは大きく異なるわけです。消防本部によって収入も変わりますし、階級も違えば貰える手当も違います。これらの要素をごちゃ混ぜにして出した平均年収の数字が、ネット上に転がっているんですね。要するにネット上で言われている消防士の平均年収は、全く当てにならないわけです。
格差は深刻
収入は消防本部によってかなりの差があります。自治体の財政に差があれば、もちろん消防士の給料にも格差が出てきます。同じ都道府県内でも4~5万円の給料差があるなんていうケースも珍しくないです。現状、消防でいい給料を貰いたいなら東京消防庁一択になります。「状況が無理!」「地元の県内で働きたい!」という方は、政令市の消防局を受験することをオススメします。政令市の自治体は規模が大きいので、組織としてもしっかりしていて給料が高い傾向にあります。それでも東京さんには到底敵いませんが…
給与明細公開
これは私の初任給の給与明細です。
総支給260,448ー控除総額44,712=手取り215,736
いかがでしょうか?消防の世界でこれだけの初任給をもらえるのはハッキリ言って一握りです。国内の数ある消防本部の中でも、間違いなく上位に食い込める月給になります。しかし警備会社に就職した大学の同期には軽く越されていました…。この手取りでもトップ層な業界なので、民間企業には足元にも及びませんね。
消防士の給料の本音
消防は低所得な職業
A.収入にこだわるなら、消防より民間企業に行くべき。
規模が大きい本部は給料がよく、救命士や管理職の中には1000万円を超えるくらい貰っている人もいることにはいます。しかしそんな高所得者は消防全体でも確実に5%にも満たないくらいです。高い地位を得られるのはごく一部で、救命士や管理職で稼げる収入にも限界があります。公務員は安く定まると書いて安定。利益追求を目的とする民間企業と、無償の市民サービスを提供するような公益の追及は相反するわけです。
田舎消防本部は厳しい
市の財政によって消防士の給料に差が出ることは先ほど解説しましたが、その格差は結構厳しいものがあります。筆者の手取りは約21万円でしたが、同じ都道府県内の別の消防本部の中には、高卒手取り12万円というところもありました。消防学校で同じ訓練、同じ生活をしているのに、これだけ所得差があるとやる気を削がれます。これは極端な例ですが、どの都道府県でも初任給に4~5万円程度の差は往々にしてあります。
小金持ちにはなれる
公務員は退職金が良く、共済年金の待遇も手厚いです。またボーナスも安定してしっかり貰えますし、福利厚生面の充実度がとても高いんですね。ですので定年まで働けば、老後はほぼ安泰と言えます。退職金の相場は大体2000万円前後と言われており、貯蓄と退職金のみで、確実に数千万円の資産を残したままリタイアできます。唯一民間企業に張り合える、または優れている点は退職金の部分です。
老後2000万円問題は解決
老後2000万円問題とは、定年退職後の30年間でおおよそ2000万円の資金が必要になるという金融庁が発表した観測です。年金の減額が示唆されていますし、頭を抱える若い方も大変多いと思われます。しかし公務員なら、退職金だけで解決できてしまう問題なんですね。リタイアまでの経済面はしんどいけど老後は安泰!というのが消防士(その他公務員)の良い点だと思います。
ぶっちゃけ仕事は楽なので、収入は見合っている
人間関係等の精神的なものは抜きにして、消防の仕事はめちゃくちゃ楽です。基本的には事務処理、事業所や学校への訓練指導がメイン業務ですが、それらの日程がない日や出動がない日は割とヒマしてます。企業と違いノルマに追われることもなく、仕事ができないからといってリストラされることもありません。そこが良いところでもあり悪いところでもあります。でも仕事の作業量と貰っている給与を対価として考えると、やっぱり消防は楽な仕事に入ると思います。もちろん部署や本部にもよります。
まとめ
・ネットで書かれている消防士の年収は誤り!
・決して高所得な職業ではない
・格差はヤバいが老後は安泰
いかがだったでしょうか?
ネット上で記載されている消防士の年収は誤りです。あくまでも様々な要素から算出した平均値なので、かなりの差がある事を分かっていただければ幸いです。また消防士は他の職業と比べて、決して高給ではありません。市町村の財政向上には限度があるので、利益追求主義である民間企業には敵わないんですね。また消防本部によってもかなりの格差があることを理解いただけたと思います。その差はかなり大きく、今後も差が開いてしまうと思われます。ですので、もしこれから消防士を目指す方は東京消防庁や政令市消防局など、規模の大きい消防本部を目指していただきたいです。
本記事は以上となります!最後までご覧いただきありがとうございました。