消防士について PR

救急車を有料化するとえらいことになる話

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救急車を有料化した方がいいって本当?
なんで有料化した方がいいの?
有料化するメリットは?

今回はこんな疑問を持つ方へ向けての記事となります。

こんにちは、にえふです。私は地方消防局に勤務していた元消防士で、現在はブログの運営や物販を営んでいるフリーランスです。

今回は救急車を有料化することに対しての疑問や考えを解説していきます!

本記事では以下がご覧になれます

・元消防士の見解
・どうして救急車の有料化の話が出ているのか
・有料化によるメリット・デメリット

元消防士の見解

A.有料化は反対です。

困りごとの解決は無料で行うべきだからです。

公共サービスからみた視点

そもそも突発的な事件や事故、命に関わるような大事の解決にお金を払うことは良心的ではないですよね。そのため皆で出し合った税金を使って、事件・事故を解決するサービスを実質無料で提供しているのが今の日本です。ですので警察官や消防は「公務員」という位置づけになっているんですね。

またアメリカを始めとする海外では、救急車の利用が有料化されている国も多いです。それに比べて日本は、国民に優しい社会になっているわけです。

商売化してしまう

救急車を有料化することはすなわち、利益を得るということになります。つまり民間企業と同じく、利益追求のために商売を行うのと同じです。こうなってしまうと「会社」になるわけで、極端な話1回の出動であり得ない額の料金を取るなんてこともできちゃうんですね。

ですので救急車が無料で使えることは、かなり国民に寄り添った制度になっているということです。

一時的な問題に過ぎない

単純に考えて高齢者は若者よりも病気や怪我の可能性が高まりますよね。ですので高齢化が進むと119番通報が増えるのは至極当たり前のことです。今後の日本がどうなっていくかは分かりませんが、高齢化社会が改善されていくのと並行して、通報の件数も減ってくことが考えられます。

つまり出動件数の増加問題は一時の問題に過ぎないということになります。

有料化しても呼ぶ人は呼ぶ

富裕層や精神疾患を持った人は有料になろうが無料だろうが救急車を呼びます笑

ですので、結局のところ劇的な効果は得られないのではないかなというのが私の考えです。お金払うから〜と言って相変わらずタクシー代わりに救急車を使う人も出てくるでしょうし、お金を払うことで横柄な態度を取る人も出てくるでしょう。

救急車の有料化が持ち上がるわけ

A.無料で利用できることによって生じている問題がたくさんあります。

軽症で救急車を呼ぶ高齢者が増えている

有料化が叫ばれる最たる理由です。

高齢化に伴って年々救急車の出動件数は増加傾向にあります。中には「自力で病院行けるやん…」という軽症の人やタクシー代わりに使いたいなんていう人もいます。もう発展した都市ほどめちゃくちゃになってるんですよ笑

高齢化の勢いは止まらず、今後しばらくはこういった不適正な救急車の利用が増えていく見通しです。要するに救急車を呼ぶハードルが低くなってきているということです。このままでは救急車がいくらあったって足りなくなります。

救急隊の負担が大きい

私が所属していた本部では、救急車の台数が12台(当時)で年間の救急出動件数は約2万件でした。

お分かりの通り、12台の車両で2万件を捌くのはかなりしんどいです。単純計算でも1台あたり年間1700件前後出動していることになります。休憩がとれない時もありますし、昼食をとらないまま夜になってしまうなんてこともざらにあります。かと言って市民からの目もあるので、車内で飲食をすることはできません。出動件数がもっと多い本部はたくさんあるので、これでもうちの消防本部はまだマシな方でした。

ちなみに東京消防庁では、実に38秒に1回のペースで出動がある計算になるそうです。東京に限らず、こうなってしまっては事務処理との並行は厳しくなります。仮眠時間を跨いで報告書を作ることもしばしば。出動するだけで疲れるのに、休憩時間を潰して事務作業をする必要があるのはしんどいですね。

いつになっても帰れない

ちなみに交代前に指令が入ればもちろん出動することになります。

1件くらいならまだマシですが、帰署途中に連発で出動を引くと地獄です。時には昼前くらいまで署に戻れないこともあるので、当番の拘束時間はかなりのものになります。

重篤な傷病者を搬送できない

特に田舎消防本部では救急車の台数にも限りがあるわけですよね。軽傷者の出動で車両が出払ってしまうと、遠い管轄地域から救急車が出動することになります。

そうすると現場に着くまで時間がかかりますし、重篤な傷病者だと時間が経つにつれて、助かる見込みがなくなってきてしまいます。つまり救急車を適正に利用することで、救える命が増えることもあります。本来救急車は急病人を迅速に運ぶための車両なので、安易に呼ぶものではありません。

有料化のメリット・デメリット

メリット

・市の節税につながる 
・本当に救急車を必要とする人が利用できる

市の節税につながる

費用の削減に繋がります。一例ですが、救急車の燃料補給を考えてみます。私の居た消防局では大体2日に1回は燃料を補給します。一回あたりの給油量を35ℓ、月に15回補給、ガソリン値を150/ℓと仮定すると…

35(ℓ)×150(ℓ/円)×15(回)=78750円

これを12ヶ月分とすると、救急車の燃料補給だけで100万円弱の費用となります。

もちろんこれは1台あたりの値段になりますし、車両は他にもかなりの数があります。つまり出動が少なければその分費用が浮くので、他の市民サービスの提供に回すこともできるわけです。

本当に救急車を必要とする人が利用できる

言わずもがな、今すぐに救急車が必要な重症者を搬送することができます。

また心肺停止の状態から1分以内に応急処置が行われると生存率は95%ほどになります。しかしその生存率は5分後に30%を切ると言われています。救急隊なら分かりますが、現場到着までの1分の差は非常に大きいです。管轄地域内の救急車が出払ってしまった場合、他のエリアから要請しなければならないので、そうなると本来の到着時間より2~3分程度遅れが生じます。この間に手遅れになってしまうケースがあるので、1分でも早く現場に向かえるよう救急車両の確保は重要です。

デメリット

経済面を気にする人が119番通報を躊躇う

経済的にゆとりがない人が通報を躊躇してしまいます。そうなると症状が悪化してしまったり、手遅れになってしまう可能性も否定できませんよね。救急搬送を任務としている消防として、これはいかがなものかと思います。公務員の使命である公共の利益追求を目指すということに反することになってしまいます。

助かる命は一つでも多い方が良いことなんて分かりきっていますよね。

まとめ

・有料化の話が持ち上がる最たる理由は「救急車を呼ぶハードルの低下」
・中でも軽症で119番通報する高齢者が圧倒的に多い
・有料化で解消される問題もあるが、救えない命がでてくるリスクも考えられる

いかがだったでしょうか?

 
有料化のメリット・デメリットは表裏一体であり、実現するか否かは別として、まだまだ課題がたくさんあります。また救急車の利用が無料であることにもきちんとした根拠があるということを認識しなければなりません。
 
本来は公共の利益のために無料なのであって、お金を払って解決することは公共サービスとして理にかなっていないわけです。
 
一方的に有料化に賛同する方も、本記事をご覧になって一度考えるきかっけになれば幸いです。
 
本記事は以上となります!最後までご覧いただきありがとうございました。
ABOUT ME
にえふ
元消防士の「にえふ」です。地方の消防局を退職後、現在は主にweb制作などを手掛けているフリーランス。倍率20倍消防局に合格した経験をもとに、試験対策ノウハウや消防に関する情報を発信しています。